「デザインがきれいだったから選んだのに、問い合わせが全然増えない」
Web制作会社選びの失敗で最も多いパターンです。ポートフォリオを見て「きれいなサイトを作れるところ」を選ぶ——一見合理的ですが、この選び方にはマーケティング成果の視点が欠けています。
私は制作ベンダー側のPMとして複数のサイトリニューアルプロジェクトに関わり、また発注者側(上場企業のマーケティング責任者)としてベンダー選定を行った経験もあります。両側の視点を持つ立場から、マーケティング成果を出すためのWeb制作会社の選び方をお伝えします。
なぜ「デザイン重視」の選定は失敗するのか
デザインが美しいことは大切ですが、それは「最低条件」であって「選定基準」にはなりません。
サイトの目的が「企業ブランディングのみ」であればデザイン重視も妥当です。しかし、多くのBtoBサイトの目的は「リード獲得」「問い合わせ増加」「採用応募増加」など、具体的なビジネス成果です。
美しいサイトでもCVRが低ければマーケティング成果は出ません。逆に、デザインは80点でも情報設計とUXが優れていれば、CVRは大幅に改善します。
Web制作会社を評価する6つの基準
基準1:マーケティング理解度(最重要)
確認方法
提案の初期段階で以下の質問をしてみてください。制作会社の回答で、マーケティング理解度がわかります。
- 「このサイトのKPIは何だと思いますか?」
- 「CVRを改善するために、どのようなアプローチを取りますか?」
- 「SEOをサイト設計にどう組み込みますか?」
良い回答の例
- 「まず現サイトのGA4データを分析して、ボトルネックを特定したいです」
- 「ユーザーの検討段階に合わせた導線設計を提案します」
- 「タイトルタグやメタディスクリプションだけでなく、サイト構造やページ速度もSEOの観点で設計します」
危険な回答の例
- 「デザインのトーン&マナーから決めましょう」
- 「SEOは公開後にやればいいと思います」
- KPIに関する質問に明確な回答がない
WebLeapでもクライアントのベンダー選定を支援することがありますが、この「マーケティング理解度」の確認で、候補の半数以上が外れるケースも珍しくありません。
基準2:情報設計力・UX設計力
確認方法
- ワイヤーフレームの提案段階で、「なぜこの構成にしたか」の説明を求める
- ユーザーの導線設計についての考え方を聞く
- 過去の制作実績で、情報設計の工夫が見られるか
チェックポイント
- デザインの前にワイヤーフレーム(情報設計)のフェーズがあるか
- ユーザーフロー、ペルソナ、カスタマージャーニーへの言及があるか
- CTAの配置やフォーム設計に関する提案があるか
基準3:CMS設計力
公開後の運用を考慮したCMS(WordPress等)の設計ができるかどうかは重要です。
確認ポイント
- コンテンツの更新がマーケティング担当者だけで完結できるか
- ブログ機能のSEO対応(構造化データ、パンくず、カテゴリ設計)
- フォームの設置・変更が容易か
- ページ速度に配慮した実装ができるか
失敗談:以前、制作会社が「オリジナルCMS」で構築したサイトがありました。デザインは素晴らしかったのですが、ブログ記事の更新に毎回HTMLの知識が必要で、マーケティングチームが自力で更新できませんでした。結果、コンテンツマーケティングが止まり、SEO施策も頓挫。公開後の運用を想定したCMS設計がいかに重要かを痛感しました。
基準4:SEO対応力
サイトリニューアルでSEO資産を失うケースが頻発しています。SEO対応力の確認は必須です。
確認ポイント
- URL設計の方針(SEOフレンドリーなURL構造になるか)
- リダイレクト設計(既存URLの301リダイレクト対応)
- 構造化データの実装
- Core Web Vitalsへの対応方針
- サイトマップの自動生成
- meta要素(タイトル、ディスクリプション)のページ別設定機能
基準5:運用・保守体制
サイトは公開して終わりではなく、公開後の継続的な改善が成果を左右します。
確認ポイント
- 公開後の保守プランの内容と費用
- セキュリティアップデートの対応頻度
- 障害発生時の対応体制(SLA)
- 改善提案の有無(アクセス分析レポート、改善提案を含むプランがあるか)
- 追加ページ制作や機能追加の費用体系
基準6:コミュニケーション力
プロジェクトの成否は、制作会社とのコミュニケーションの質に大きく左右されます。
確認ポイント
- 提案時のレスポンス速度(ここが遅い会社は、制作中も遅い傾向)
- 質問に対する回答の的確さ
- 専門用語を使わず、わかりやすく説明できるか
- プロジェクト管理の方法(ツール、報告頻度、進捗共有の仕方)
ベンダー評価シート
上記6基準をスコア化して比較する評価シートです。
| 評価基準 | 配点 | A社 | B社 | C社 |
|---|---|---|---|---|
| マーケティング理解度 | 30点 | |||
| 情報設計力・UX設計力 | 20点 | |||
| CMS設計力 | 15点 | |||
| SEO対応力 | 15点 | |||
| 運用・保守体制 | 10点 | |||
| コミュニケーション力 | 10点 | |||
| 合計 | 100点 |
マーケティング理解度に30点を配分しているのがポイントです。デザイン力は独立した評価項目に入れていません。デザイン力は「情報設計力・UX設計力」の中に含めて評価します。「きれいだけど使いにくいデザイン」は評価に値しないからです。
制作会社への「良い発注」のコツ
制作会社の力を引き出すのは、発注者側の準備次第でもあります。
RFPを作る
口頭で「こんなサイトが欲しい」と伝えるだけでは、認識のズレが生まれます。RFPに以下を盛り込みましょう。
- サイトの目的とKPI(数値目標)
- ターゲットユーザーの定義
- 必須要件と希望要件の区別
- 現サイトの課題(データに基づく)
- 予算とスケジュールの目安
- 評価基準
「おまかせ」にしない
「プロにおまかせします」は一見謙虚ですが、実は危険です。制作会社はWebのプロではあっても、あなたのビジネスのプロではありません。ターゲットユーザーの理解、ビジネスモデル、競合状況——これらは発注者側が積極的に共有すべき情報です。
判断基準を「データ」に置く
「社長の好みに合うデザイン」ではなく「ターゲットユーザーにとって最適なUX」を判断基準にしましょう。制作プロセスの中で意見が分かれたときに、データに基づいて判断できる体制を作っておくことが重要です。
こんな制作会社には注意
私が制作ベンダーのPMをしてきた経験から、注意すべきサインをお伝えします。
- ヒアリング前に見積もりを出す:要件を理解せずに金額を出せる会社は、パッケージ型で個別最適化しない可能性が高い
- 「全部できます」と言う:デザイン、開発、SEO、マーケティング——すべてを自社内で高品質にできる会社は少ない。得意領域を正直に言える会社の方が信頼できる
- 過去の実績を見せたがらない:ポートフォリオに成果数字(CVR改善、PV増加等)が含まれていない場合、マーケティング成果への意識が低い可能性
- 保守契約を強制する:公開後の保守は重要ですが、不当に高額な保守契約やサイトの所有権を制限する契約には注意
実務者まとめ
Web制作会社選びは「デザインが好みか」ではなく「マーケティング成果を一緒に追求できるパートナーか」で判断してください。評価基準の最上位はマーケティング理解度。ここが低ければ、どんなにデザインが美しくても、ビジネス成果にはつながりません。
WebLeapでは制作ベンダーのPM経験を活かし、サイト制作ディレクション——つまり発注者側に立って制作会社との橋渡しをするサービスを提供しています。「制作会社に何を伝えればいいかわからない」という方は、ぜひご相談ください。
WebLeapのUX改善・サイト制作ディレクションサービスについて詳しくはこちら → /service/ux-web/