BtoBのカスタマージャーニーマップ作成 — 購買プロセスを可視化する実践手順

「カスタマージャーニーマップを作りたいが、BtoCの事例ばかりでBtoBにそのまま使えない」——これはBtoBマーケティング担当者が必ずぶつかる壁です。

BtoCのジャーニーマップは「個人が商品を認知→検討→購入」というシンプルな流れですが、BtoBでは事情がまったく異なります。検討期間は数ヶ月〜1年、関与者は担当者・上長・情報システム部・経理・経営層と5人以上、稟議プロセスが入り、予算サイクルにも左右されます。

私が上場企業でマーケティング責任者を務めていた時、最初にBtoCの書籍を参考に作ったジャーニーマップは、まったく実務に使えませんでした。「担当者が認知→興味→比較→購入」という一直線のマップでは、実際の購買プロセスの複雑さを表現できなかったのです。

この記事では、BtoB特有の要素を反映したカスタマージャーニーマップの実践的な作り方を解説します。


BtoBのカスタマージャーニーがBtoCと異なる5つのポイント

1. 意思決定者が複数いる

BtoBの購買には、平均5〜7名の関与者がいるとされています。それぞれの関心事が異なるため、ジャーニーマップには複数のペルソナレーンが必要です。

関与者 主な関心事
現場担当者 使いやすさ、業務効率の改善
マネージャー チーム全体の生産性、導入負荷
情報システム部 セキュリティ、既存システムとの連携
経理・購買部 コスト、契約条件
経営層 ROI、経営戦略との整合性

2. 検討期間が長い

BtoBの平均検討期間は3〜6ヶ月、大手企業では12ヶ月以上になることも珍しくありません。ジャーニーマップの時間軸は「日」ではなく「月」単位で設計します。

3. 稟議・承認プロセスがある

担当者が「導入したい」と思ってから、実際に発注に至るまでに社内稟議が入ります。この稟議プロセスでの離脱が、BtoBの商談で最も多い失注原因のひとつです。

4. 情報収集行動が複雑

BtoBの買い手は、営業と接触する前にすでに購買プロセスの57%を完了しているというデータがあります。Web検索、ホワイトペーパー、ウェビナー、同業者への相談など、複数のチャネルで並行して情報収集を行います。

5. 予算サイクルに影響される

多くの企業には年度予算があり、「予算申請は毎年9月」「新年度は4月」といったサイクルが購買タイミングを左右します。


BtoBカスタマージャーニーマップの構成要素

マップの基本フレーム

横軸(フェーズ):
課題認識 → 情報収集 → 解決策探索 → ベンダー比較 → 社内稟議 → 契約・導入

縦軸(レイヤー):
1. ペルソナ別の行動
2. ペルソナ別の思考・感情
3. タッチポイント(チャネル)
4. 提供すべきコンテンツ
5. KPI(計測指標)
6. 社内関与者の変化

BtoCとの最大の違いは、縦軸に「社内関与者の変化」レイヤーを加えることです。フェーズが進むにつれて関与者が増えていく様子を可視化します。


ジャーニーマップ作成の5ステップ

ステップ1:ペルソナの定義(複数)

BtoBでは最低3つのペルソナを定義します。

  • 起案者ペルソナ: 課題を最初に認識し、解決策を探す人(現場担当者〜マネージャー)
  • 影響者ペルソナ: 導入判断に影響を与える人(情報システム部、経理など)
  • 決裁者ペルソナ: 最終的に予算承認する人(部長〜経営層)

各ペルソナの「業務上の課題」「情報収集の方法」「意思決定の基準」を具体的に定義します。

ステップ2:購買フェーズの定義

自社の顧客に合わせて、購買フェーズを定義します。以下は標準的な6フェーズです。

フェーズ 状態 主な関与者
課題認識 現状に課題を感じ始める 起案者
情報収集 解決策の方向性を探る 起案者
解決策探索 具体的なサービス/ツールを調査 起案者、影響者
ベンダー比較 候補を絞り込み、比較検討 起案者、影響者、決裁者
社内稟議 社内承認を得るプロセス 起案者、決裁者
契約・導入 契約締結と導入開始 全員

ステップ3:各フェーズの行動・思考・感情を記述

ここが最も重要であり、最も難しいステップです。

情報ソースの優先順位

  1. 営業チームへのヒアリング: 実際の商談でどんな質問を受けるか、どんな理由で失注するか
  2. 既存顧客へのインタビュー: 導入前の検討プロセスを振り返ってもらう(最低5社)
  3. Webアクセスデータ: どのページがどのタイミングで閲覧されているか
  4. IS(インサイドセールス)の架電記録: リードの温度感と反応パターン

失敗事例:会議室で想像だけで作ったマップ

以前、マーケチーム4名で2時間のワークショップを開き、「たぶんこうだろう」でジャーニーマップを完成させたことがあります。しかし、その後の営業同行で実際の顧客の購買行動を観察したところ、想定と現実の乖離が大きく、マップは作り直しになりました。ジャーニーマップは「想像」ではなく「事実」をベースに作る必要があります。

ステップ4:タッチポイントとコンテンツをマッピング

各フェーズ×各ペルソナに対して、どのチャネルでどんなコンテンツを提供するかを決めます。

例:SaaS企業のタッチポイントマッピング

フェーズ 起案者向け 決裁者向け
課題認識 SEOブログ記事、SNS投稿 業界レポート
情報収集 ホワイトペーパー、ウェビナー 先進企業インタビュー記事
解決策探索 サービスサイト、比較記事
ベンダー比較 導入事例(詳細)、無料トライアル ROI試算資料、経営層向け1枚サマリー
社内稟議 稟議書テンプレート、FAQ 導入効果レポート

WebLeapがビットキーのリード獲得基盤構築を支援した際も、まずジャーニーマップを作成し、各フェーズで不足しているコンテンツを特定するところから始めました。マップなしにコンテンツを量産しても、必要なところに必要なものが届きません。

ステップ5:KPIと計測方法を設定

各フェーズの進行度を測るKPIを設定します。

フェーズ KPI 計測方法
課題認識 ブログPV、SNSリーチ GA4、SNS分析ツール
情報収集 ホワイトペーパーDL数 MA
解決策探索 サービスページ閲覧数、滞在時間 GA4
ベンダー比較 事例ページ閲覧、料金ページ閲覧 MA(スコアリング)
社内稟議 提案書DL、2回目以降の問い合わせ CRM
契約・導入 受注数、契約金額 SFA

ジャーニーマップの活用方法

1. コンテンツギャップの特定

マップを作ると「このフェーズのこのペルソナ向けのコンテンツが存在しない」というギャップが可視化されます。WebLeapでは、SEO施策でPVを200から70万/月に成長させましたが、その過程でジャーニーマップ上のギャップを優先的に埋めるコンテンツ戦略が、効率的なPV成長に貢献しました。

2. マーケ-IS-営業の共通言語にする

ジャーニーマップを全チームで共有することで、「このリードは今どのフェーズにいるか」が共通言語になります。

3. 施策の優先順位づけ

リソースが限られる中で「どのフェーズの施策を優先するか」をデータに基づいて判断できます。


実務者まとめ

  • BtoBのジャーニーマップはBtoCとは別物。複数ペルソナ、長い検討期間、稟議プロセスの反映が必須
  • 最低3つのペルソナ(起案者、影響者、決裁者)を定義する
  • 「想像」ではなく、営業ヒアリング・顧客インタビュー・データを事実ベースに作る
  • 作って終わりではなく、コンテンツギャップの特定やチーム間の共通言語として活用する
  • 半年に1回は見直し、実際の顧客行動データで更新する

WebLeapのBtoBマーケティング支援サービスについて詳しくはこちら → /service/btob-marketing/

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