「UXが大事なのはわかるけど、それってデザイナーの仕事でしょ?」
マーケティング担当者からこの言葉を聞くたびに、少しもったいないなと思います。UXデザインをデザイナーの専門領域だと捉えてしまうと、マーケターにとって最も強力な武器の一つを手放すことになるからです。
私は上場企業のマーケティング責任者として、データに基づくUX改善サイクルを組織に定着させた経験があります。その中で確信したのは、UXはマーケターこそ主導すべき領域だということです。
この記事では、UXデザインの基本概念をマーケティングの文脈で再定義し、マーケターがどこからUX改善を始めればいいかを解説します。
UXデザインとは何か — マーケター向けの定義
UXデザイン(User Experience Design)は、直訳すると「ユーザー体験の設計」です。しかし、この定義は広すぎて実務では使いにくい。
マーケター向けに再定義するなら、UXデザインとは「ユーザーが目的を達成するまでの道のりを、できるだけスムーズにすること」です。
Webサイトの文脈では、こう言い換えられます。
- ユーザーが知りたい情報に最短でたどり着けること(情報設計)
- ユーザーが迷わず操作できること(UI設計)
- ユーザーが行動を起こしたくなること(CTA設計・説得設計)
この3つは、すべてマーケティング成果に直結します。つまり、UXはデザイナーだけの仕事ではなく、マーケターの中核業務なのです。
なぜマーケターがUXを主導すべきか
理由1:ユーザーデータを持っているのはマーケター
GA4のデータ、広告のパフォーマンスデータ、顧客の問い合わせ内容、営業からのフィードバック——これらはすべてマーケターの手元にあります。UX改善の起点は「ユーザーがどこで困っているか」のデータです。デザイナーよりもマーケターの方が、改善すべき箇所を正確に特定できる立場にいます。
理由2:ビジネスゴールを理解しているのはマーケター
UX改善は「使いやすさの向上」が目的ではありません。「ビジネス成果の向上」が目的です。CVRを上げる、リード獲得を増やす、LTVを高める——このビジネスゴールとUX改善をつなげる翻訳者の役割は、マーケターにしかできません。
理由3:改善サイクルを回せるのはマーケター
UX改善は一度やって終わりではなく、継続的なPDCAが必要です。仮説を立て、施策を実行し、データで検証する——このサイクルを日常的に回しているのはマーケターです。
マーケター視点のUX改善 3つのアプローチ
アプローチ1:ユーザーフロー最適化
「ユーザーがサイト内をどう移動しているか」を可視化し、理想的な導線との乖離を見つけます。
実践手順
- GA4の「ユーザーフロー」レポートで実際の遷移パターンを確認
- 主要な導線を定義:例)トップ → サービス → 事例 → 料金 → 問い合わせ
- 各ステップの離脱率を計測
- 離脱率が高いステップの原因を分析
- 改善施策を実行・検証
よくある問題パターン
- サービスページから事例ページへの導線がない(ユーザーが比較検討できない)
- 料金ページが存在しない、または見つけにくい(BtoBでも料金目安は重要)
- CTAがページの最下部にしかない(スクロールしないユーザーを取り逃す)
WebLeapがSEO施策と併せてUX改善を行ったプロジェクトでは、ユーザーフローの最適化がPV200から月間70万への成長の大きな要因でした。SEOで集客してもUXが悪ければユーザーは離脱します。集客とUXは車の両輪です。
アプローチ2:情報設計の見直し
「何をどの順番で見せるか」は、マーケターが最も介入すべき領域です。
情報設計の原則
- ユーザーの知りたい順番に並べる:会社が伝えたい順番ではない
- 結論を先に:スクロールしなくても主要な情報が伝わる
- 情報の粒度を段階的に:概要→詳細→補足の階層構造
- 1ページ1メッセージ:複数のメッセージを詰め込まない
失敗談:以前、あるクライアントのサービスページを分析したとき、ページの最初の3スクリーンが「会社の理念」と「代表メッセージ」で埋まっていました。ヒートマップを見ると、ユーザーの70%がその手前で離脱。ユーザーが知りたかったのは「このサービスは自分の課題を解決できるか」であって、会社の理念ではなかったのです。
情報の優先順位を「会社が伝えたい順」から「ユーザーが知りたい順」に変えただけで、ページの離脱率が40%改善しました。
アプローチ3:CTA設計・説得設計
ユーザーに行動を起こしてもらうための設計は、マーケティングの核心そのものです。
CTA設計のポイント
- 文言:「お問い合わせ」→「無料で相談する」(行動内容とハードルの低さを明示)
- 配置:ページ内の複数箇所に設置(ファーストビュー、セクション末尾、ページ末尾)
- 周辺情報:CTAの周りに信頼性要素を配置(実績数字、「営業電話なし」など)
- 選択肢:ハードルの異なる複数のCTAを用意(問い合わせ/資料DL/セミナー申込)
説得設計のフレームワーク
ロバート・チャルディーニ(Robert Cialdini)の影響力の6原則をWeb上で活用します。
| 原則 | Web上での活用例 |
|---|---|
| 社会的証明 | 「導入企業300社」「月間○件の問い合わせ」 |
| 権威性 | 「上場企業マーケティング責任者の経験」「業界専門家が監修」 |
| 希少性 | 「今月の無料相談枠は残り○件」 |
| 返報性 | 有益な無料コンテンツの提供(ホワイトペーパー、チェックリスト) |
| 一貫性 | ステップ式フォームで段階的にコミットメントを高める |
| 好意 | 実名・顔出しのプロフィール、親しみやすいトーン |
マーケターのためのUX改善チェックリスト
今すぐ自社サイトで確認できるチェック項目です。
ファーストビュー
- [ ] 3秒で「何のサイトか」がわかるか
- [ ] ターゲットユーザーが「自分に関係ある」と感じるか
- [ ] CTAが見えるか
ナビゲーション
- [ ] 3クリック以内に主要ページにたどり着けるか
- [ ] メニュー構造はユーザーの思考に沿っているか
- [ ] モバイルでもナビゲーションが使いやすいか
コンテンツ
- [ ] 情報はユーザーの知りたい順番に並んでいるか
- [ ] 具体的な数字や事例が含まれているか
- [ ] 専門用語を使いすぎていないか
コンバージョン
- [ ] CTAの文言は行動を促す表現か
- [ ] フォームの項目数は最小限か
- [ ] 信頼性要素(実績、事例、顧客の声)は十分か
パフォーマンス
- [ ] ページの読み込みは3秒以内か
- [ ] モバイルでの表示は最適化されているか
- [ ] Core Web Vitalsは基準を満たしているか
UX改善を組織に定着させるには
UX改善を単発の施策ではなく、組織の習慣にするためのポイントです。
- 定期的なデータレビュー:月次でGA4とヒートマップを確認する会議を設定する
- 小さな改善の積み重ね:大規模リニューアルではなく、2週間サイクルの小さな改善を繰り返す
- 成果の可視化:改善施策とその結果を社内で共有し、UX改善の価値を組織に浸透させる
WebLeapでは、この「データに基づくUX改善サイクル」の構築を支援しています。ツールの導入だけでなく、改善サイクルを回せる体制づくりまでを一貫してサポートします。
実務者まとめ
UXデザインは「デザイナーの仕事」ではなく「マーケターの武器」です。ユーザーデータを持ち、ビジネスゴールを理解し、改善サイクルを回せるマーケターこそ、UX改善を主導すべき存在です。
まずは上記のチェックリストで自社サイトを点検してみてください。「3秒で何のサイトかわかるか」——この1つの質問から、UX改善は始まります。
WebLeapのUX改善・サイト制作ディレクションサービスについて詳しくはこちら → /service/ux-web/